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2009年2月25日 (水)

10年で何が変わったのか?~分配面からみた国民経済計算その2~

今回は、分配面からみた国民経済計算の変化の、2回目です。まずは、前回のおさらい。

◎前回のまとめ

・デフレ化においては、単位労働費用つまり雇用者報酬の圧縮が、大きい
・雇用者報酬、労働分配率が減少し、固定資産減耗が営業余剰・混合所得は増加
・固定資産減耗の割合の増加が、雇用者報酬の押し下げ要因になる

今回は、1人当りの雇用者報酬・賃金の推移を中心に、変化をみます。

◎1人当りの雇用者報酬および賃金の推移

では、雇用者1人当りの報酬および賃金の推移は、どのように変化したのであろうか?
下図は、雇用者1人当りの報酬および賃金、雇用者報酬、雇用者1人当りの報酬、雇用者1人当りの賃金、および雇用者の成長率の推移である。成長率は、1993年を100として算出した。

1人当りの雇用者報酬、雇用者の賃金は、1997年をピークに、2004年まで減少し、その後下げ止まりしていることがわかる。

1997年までは、雇用者報酬の成長が、雇用者1人当りの報酬および賃金に還元される割合が、高かったが、2004年以降は、雇用者報酬が下げ止まり増加局面に達しても、雇用者1人当りの賃金に還元されず、雇用者数の増加に寄与していることが、わかる。

~1人当りの報酬・賃金、雇用者報酬、1人当りの雇用者報酬・賃金、および雇用者の成長率の推移~

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出所:国民経済計算(内閣府)を基に作成(チーム『民』)

雇用者報酬 = 雇用者の賃金+雇主の社会負担
雇主の社会負担 = 雇主の現実的社会負担 + 雇主の帰属社会負担
雇主の現実社会負担:健康保険などの社会保険料や厚生年金基金などの負担額のうち雇主負担分
雇主の帰属社会負担:退職一時金、業務災害補償などの雇主負担額

さらに、97年以降の雇用者報酬の変動を、雇用者数の変化と、雇用者一人当たりの報酬の変化に要因分解してみると、2003年、2003年は、1人当りの雇用者報酬の落ち込みが、雇用者報酬の引き下げに大きく寄与しており、雇用者報酬の成長率がプラスに転じた、2005年以降も伸び悩んでいることが、はっきりと分かる。

一方で、2003年以降は、雇用者数の増加が、雇用者報酬の成長に大きく寄与していることが、わかる。

~雇用者報酬の変化と1人当りの報酬・雇用者数への寄与度分解~

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出所:国民経済計算(内閣府)を基に作成(チーム『民』)

◎労働の変化

1人当りの雇用者報酬および賃金が減少している理由としては、派遣社員の割合が増えていることが考えられる。
下図は、正規社員と非正規社員の推移である。
98年と2007年を比較すると、正規社員は、353万人減少98年比:9.1%減)、一方で非正規社員は588万人増加98年比:47.7%増)し、労働者にしめる非正規社員の割合は、33.5%(9.9%増)にまで達している。

~正規社員・非正規社員の推移~

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出所:労働力調査長期時系列データ(総務省)を基に作成(チーム『民』)

雇用形態別の年収階層分布を示した結果が、下図。

非正規社員は、100万円未満が最も多く42.3%年収200万円未満の割合が77%、一方、正規社員の67%が、500万円未満となっており、格差が極めて大きいことがわかる。
非常に低い賃金の非正規社員が、急増しているのだから、当然、1人当りの雇用者報酬および賃金は、減少するのは自明であり、名目GDPの成長に雇用者報酬が追いつかず、労働分配率も上がらないのは、当然の帰結だといってよい。
グローバル競争を勝ち抜くうえで、労働生産性を向上させることは至上命題であるが、賃金の安い派遣社員を増やし人件費の削減による労働生産性に走ってしまったのは、
妥当な対応であったとは、到底いえない。

~雇用形態別の年収階層分布(2007年度)~

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出所:労働力調査詳細結果(総務省)を基に作成(チーム『民』)

◎失業率と名目GDPの推移

では、非正規社員を増やしたことによる負の側面は、上述したとおりであるが、良かった点は何であろうか。
下図は、失業率と名目GDPの実数と変化率の推移である。

~失業率と名目GDPの実数と変化率の推移~

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出所:労働力調査詳細結果(総務省)及び国民経済計算確報(内閣府)を基に作成(チーム『民』)

失業率の減少は、名目GDPの成長を上回っており、派遣社員を増やしたことは、失業率を低下させることには、寄与したといってよい。
これは、非正規社員を増やしたことの、正の側面といって良いだろう。

ただ、正規社員と非正規社員の格差はあまりにも大きいので、同一労働・同一賃金など派遣社員の待遇をする法整備することが急務であるのは、言うまでもない。

また、労働生産性を増やすには、生産コストを下げるのではなく、高付加価値の製品・サービスを生み出す戦略にシフトする必要がある。

金融危機により景気が大幅に悪化している現在、市場にはその余力は、ない。

産業構造の大転換を、政治主導で行なうしかないのだが、政府の対応の概ね半分は、金融面での対応であり、これでは、危機を脱せない。
なんとか、融資されても、仕事をつくる資金になるのではなく、食いつなぐ資金になるだけで、その先には返済がまっている。

新しい産業を生み出す、仕事をつくるための、財政出動を行なうのが、本当の景気対策。

私たちチーム『民』としては、早急に下記の景気対策を行なうべきだと、考えている。

◆経済対策
・政府系ファンドを設置し、環境ビジネス・サービスロボット分野に大規模な出資し、産業を育成する
・太陽光パネルを中心とする自然エネルギー利用発電の普及促進策として、大規模な助成を実施する
・省エネ照明や機器の設備投資に対する、大規模な助成

◆負担軽減策
・飲食品および公共料金の消費税0%(ゼロ税率:もちろん恒久的に)

◎まとめ

分配面からみた国民経済計算の推移をみると、下記のことが、わかった。

・1人当りの雇用者報酬および賃金は、97年以降長期低迷、雇用者報酬の成長率がプラスに転じた05年以降も、伸び悩む
・2003年以降は、雇用者数の増加が、雇用者報酬の成長に大きく寄与、しかし増加したのは非正規社員
・1人当りの雇用者報酬が低迷した、大きな要因は、派遣労働者の急増

戦後最長の好景気と言われていたが、実態は不況を脱したにすぎず、雇用者の報酬にはほとんど還元されていない現状が、浮きぼりになった。

このような状況の中、今回の金融危機、政治が判断や行なうべき施策の選択を誤れば、今後長い間経済は低迷し、私たちの生活水準は、益々悪くなるだろう。

次は、分配面からみた国民経済計算の国際比較について示します。

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コメント

■今後の景気動向について-マスコミの論調に惑わされないために-マスコミのおばかな論調を叩き潰そう!!
こんにちは。先日「1ドル70円台の日本経済:三橋貴明(作家)」という文章を、全部私のブログで掲載しました。簡単にいうと、日本の現在の真の経済力と、マスコミなどで喧伝する内容との違いを数字をもとにはっきりさせようとの内容です。この内容、私がブログで過去に何回か主張してきたことを、包括的にしかも、物語風に判りやすく解説してありましたので、私の意見を代弁していただけるものとして掲載しました。しかし、この文章、確かに物語風なので読みやすいですが、引用したり、短時間でその内容を把握するのには、向いていないと思いましたので、私のブログでレポート風に再度まとめてみました。無論、私が調べた内容なども付け加えてありますが、この文章の作者の意図を妨げるものではありません。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

投稿: yutakarlson | 2009年2月25日 (水) 15時29分

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